■第6話『前兆』
「どーする?俺っ!!!」夜の帳の中、温度宮は1人葛藤していた。
遡る事、数日。
木曜日、夕方。
4人はこの前と同じファミレスにいた。
「さっき学校で温度差と話してたんだけどさ、遊園地とか、どうかな?」
「この4人で行ったら、絶対楽しいッスよね!」
「その事なんだけど・・・」
凛香が口を開いた。
「琴乃から提案がありまーす!」
「えっ?あたしが言うの?」
「だって!琴乃が言い出したんじゃん!!」
「えーっと・・・その~・・・」
「も~ぉ!!」
モジモジしている琴乃を見かねて、凛香が代弁した。
「実はね、琴乃んち、お金持ちなんだよね。で、親が伊豆に別荘持ってて、いつでも使えるんだって。で、琴乃は4人でそこ行きたいんだって!もちろん、あたしも賛成!」
「べべべべべべべべべ別荘ですと!?」
「そ、そんな立派なものじゃないんだけど、一応・・・ね」
「えーっと、でも、伊豆ってちょっと遠いよね?・・・電車で2時間くらい?」
「うん。だから、土曜日の午前中に出発しちゃって、向こうで観光スポットとか見て・・・その日は別荘に泊まって、日曜日ゆっくり帰ってくればいいんじゃないかなって」
「とととととととととととと泊まり!?別荘で・・・泊まり!?」
「ダメかな?」
「よよよよよよよよよよよよよ喜んでぇ!!!!!!」
ファン持と温度宮は声を揃えた。
土曜日、朝。
ファン持と温度宮は、約束の時間の30分前に集合場所である最寄駅の前に立っていた。
そして、ファン持と温度宮は若干勃っていた。「先輩・・・」
「・・・ん?」
「今日って・・・ヤれますよね?」
「うん・・・たぶん」
2人は、定まらない視線をぼんやりと空に向けたまま、会話した。
「まぁ、でも、最終判断はアレだな。2人の格好だな」
「そうですね・・・彼女たちの露出度で判断しましょうか・・・」
「あぁ。ポイントは、どれだけ脚を出してるか・・・だな」
「そうですね・・・」
「ファンガツく~ん!温度差く~ん!」
ファン持と温度差が到着してから5分も経たないうちに、琴乃と凛香がやって来た。
声のする方を向いたファン持と温度宮は、次の瞬間にはガッツポーズをしていた。
琴乃は、ノースリーブのミニのワンピースに薄手のカーディガン。
凛香は、淡いピンクのチュニックにデニムのショートパンツ。
どちらも、生脚丸出しだった。
定番の学生あるあるに『学校で会う分にはいい感じだった異性の、私服を見て引いた』というのがあるが、そんな心配は皆無だった。
週末という事もあり、駅前にはたくさんの人が行き交っていたが、その中でも琴乃と凛香の美しさは際立っていた。
そして、ファン持と温度宮は若干勃っていた。いや、それどころか、ファン持と温度宮の2人には、琴乃と凛香の姿は、オープニングのイメージシーンで微笑むダブルキャストのセクシー女優さながらに映っていた。
そして、4人の男女は、一泊旅行へと旅立っていった。
そして、ファン持と温度宮は若干勃っていた。道中、ファン持と温度宮は、いつものように笑いと取りつつも、紳士的に振る舞った。
込み上げてくる欲望と必死に戦いながら。
しかし、欲望という名の強敵は、幾つものトラップを仕掛けてくるのであった。
移動の電車にて。
「ねぇ!ここ行ってみない?」と凛香が差し出したるるぶを見るふりをして、温度宮は凛香の胸元をチラ見した。
修善寺にて。
「あっちにも何かあるみたいだね」と向こうを見るふりをして、ファン持は目の前でソフトクリームを舐める琴乃の舌をチラ見した。
伊豆シャボテン公園にて。
「ねぇ!温度差く~ん!こっちにカピバラいるよ~!」と大きく手招きする凛香の脇を、温度宮はチラ見した。
土産物屋にて。
「あー、これ可愛い!」と高い棚にあるぬいぐるみを手に取ろうとつま先立ちした琴乃の太ももからふくらはぎにかけてを、ファン持はチラ見した。
レンタルビデオ店にて。
新作DVDのパッケージの隅から隅までを、マ咲はガン見した。ババァーーーン!!!「なんか、すっごい楽しかったね~!」
「もう、こんな時間になっちゃってたんだぁ!」
「じゃあ、そろそろ・・・別荘に向かおっか?」
琴乃の案内で、4人は路線バスに乗った。
バスの中はかなり混み合っていた。
見渡すと2人掛けの席がひとつだけ空いていた。
ファン持と温度宮は、琴乃と凛香に座るように勧めた。
「なんか、ごめんね。あたしたちだけ」
「いいよ、俺ら立ってるから」
実際、ファン持と温度宮は若干勃っていた。ダブルデート~夜編~につづく。
そして、ファン持と温度宮は若干勃っていた。
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