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『予定』5

―9―

2011年6月11日(土)








緊張からなのか、興奮からなのか、
男は午前4時には目を覚ましていた。

俺が電車に乗る月曜から金曜までは、いつも一緒だが、
果たして、斎藤さんは、土日は休みなのだろうか・・・
だとしたら、彼女はどんな休日を過ごすのだろうか・・・

そんな思いから、早めに出掛けて確認しようと、
目覚まし時計を5時にセットしたのだが、
男は、1時間も前に目が覚めた。






男が彼女のマンションの前に到着したのは、
午前6時30分少し前だった。

まずは、
マンションの前の道路を通り過ぎる通行人を装うつもりだったが、
ふと彼女の部屋を見上げて、思わず立ち止まってしまった。

昨夜のうちに済ませたのか、それとも、もう起きているのか、
それは定かではなかったが、
ベランダに、既に洗濯物が干されていたのだ。

男の目を奪ったのは、
その洗濯物の中にあった淡い色の下着類だった。

さすがにマンションの5階ともなると、
下着泥棒などと言った類の心配はいらないのだろうか。

そう冷静に分析する反面、
男の中には、今までにない感情が生まれつつあった。

つい先刻までは、純粋に彼女の事を知りたいという思いでいたのが、
今、男を支配しているのは、性的興奮だった。

男は、
彼女があの下着を身に纏う姿を想像した。
そして、その性的興奮が、
今日の目的である『侵入』を、強く強く後押しした。





どれ程経っただろう。

相も変わらず、
男は、彼女の洗濯物に見とれていた。

そして・・・
男は全く気付かなかった。
彼女が、ベランダに出てきている事に。

ハッとした。
男は、どうしていいのか分からず、全速力でその場から走り去った。

もう完全にマンションが見えなくなった所で、
ブロック塀に寄り掛かり、息を整えた。



やばい・・・
バレた!?
確かに、こっちを見ていたよな?
彼女は、俺に気付いた?
電車で声を掛けられた、あの男だと気付いたのか?
彼女は、俺を・・・睨んでた?
いや、待てよ・・・
もしかして・・・微笑んでいた???





男は、パニックに陥った。

彼女がベランダに出ていたのは確かだ。
しかし、彼女がどんな表情をしていたのか、
果たして自分に気付いてたのかどうか、
男に確認する術は無かった。

息切れが収まりかけた頃、
考えに考えた挙句、
男はマンションの方へ戻る事にした。

どうしても、部屋に侵入したい。
それが、今日の『予定』なのだから。







恐る恐るマンションの方へと戻った。
そこを通り過ぎるふりをして、チラッと確認した。

ベランダに彼女の姿は無かった。
男は安堵した。

安堵した、その刹那。

今度はエントランスから、彼女が出てきた。

男は、
慌てて、マンションのごみ集積場のフェンスに身を潜めた。

今度こそ、バレた?
俺を追い掛けてきたのか?

男は、再びパニックに陥った。

しかし、
彼女は何事も無かったかの如く、
男が隠れている方とは反対側に走っていった。

男が、そっと身を乗り出して確認すると、
彼女は髪を一本に束ね、
ランニングスーツにランニングシューズという格好で、
男の視線から、すぐに遠ざかっていった。

斎藤さんは、ジョギングに出掛けたのか・・・
と言う事は・・・部屋は留守!!!

男は、再び興奮した。

ジョギングに行ったのなら、
少なく見積もっても、10分や15分で帰ってくる事はないだろう。

運動嫌いで、
そういった類のものには縁の無い男だったが、
最低30分はかかると踏んだ。

何食わぬ顔で、エントランスへ向かい、
エレベーターに乗り込み、両手にゴム手袋をはめ、
5階の507号室に向かった。

侵入の際、指紋を残してはならないと、
ここでも男は冷静さを見せた。








エレベーターを降りた瞬間、
男は、ある物を発見した。

名前までは思い出せなかったが、
なんとなくテレビで観た事のあるキャラクターのキーホルダーが、
通路に落ちていた。

男がそれを拾い上げると・・・
キーホルダーには、3種類の鍵が取りつけられたいた。

まさかとは思った。
これが彼女の部屋の鍵なのかも分からなかったし、
そもそも、彼女が落とした物なのかさえ分からない。

しかし次の瞬間には、男は一番奥の部屋へと進み、
無作為に選んだ一つ目の鍵を、彼女の部屋の鍵穴に差し込んでみた。





ガチャリと、金属音がした。




嘘だろ・・・



まだ半信半疑だった男は、
恐る恐るドアノブを掴んでみた。

すると、ドアが開いた。





男の興奮は最高潮に達した。

このドアの向こうは、
ついさっきまで、俺の愛する斎藤さんがいた空間。
そして今、
俺は、その空間に侵入する事を許されたのだ。






いや!





そんな偶然があるだろうか・・・
偶然にしては出来過ぎていないだろうか・・・
たまたま鍵を落としてしまった?

そもそも、
ベランダから怪しい男を発見していたのなら、
それが、以前電車で声を掛けられた男だと認識できたのなら、
そんな直後に、呑気にジョギングなどに出掛けるだろうか・・・

冷静にこれまでの状況を振り返る半面、
男は、奇跡的偶然として理解しようともしていた。

神様が味方してくれたんだ。
やっぱり、あのスケジュール帳に書き込んだ『予定』は、
その通りになるんだ。
そして、僕と斎藤さんは、やっぱり結ばれる運命なんだ。

男の中で、疑念と期待とが激しくしのぎを削り、
結果、期待が勝った。







男は、ゴクリと喉を鳴らし、
わずかばかり開けたドアの隙間から、室内へとさっと滑り込んだ。







―つづく―
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comment

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No title

ハラハラする・・・!!

演出がもう・・・焦らし方がウマイなぁ、もう!!www

今回はっきりと「性的興奮」とかって言葉が出ちゃってるし
次回か、その次あたりで官能的な描写が・・・?

もしそうなら、どうか筆者のファンガツさん自身の
性的興奮を我慢しつつ、冷静に性的な文章を
書いてくださいね!!

読者の僕たちは我慢しないで性的興奮しながら読みますから!!

No title

住居不法侵入罪、適用!(言いたかっただけww)

さて、私は過去中央線沿線に住み、通勤に使い、
ジョギングを趣味にし、これほどまでにあの頃の私を彷彿
させている物語が今までなかったので、驚いています!!!

実際カギを落としてしまったこともあります。
うわー。タイムマシンで見てきたかのようなガツマンさんの記事。
下着の色は、言えませんよw 言えるわけないじゃないかーww

怖いよぅ。でも大丈夫。エンズイ蹴りできるもんね。とりゃっ、とね。

No title

ムム・・斉藤さんが逆に男を監視してるみたいだ。
鍵も落として。これは斉藤さんのトラップだ!
なんて勝手なこと言ってますが
「一人暮らしの女性の家に侵入」
興奮するなぁ・・
とりあえずパンティ、匂いを嗅いて頭に被ってみるのかなぁ・・

No title

ちょ、斉藤さん不用意に鍵を・・・
ん??
ブタマン先生のコメントも気になる・・・


でも、僕は今回ここに注目せざるを得ません。

>なんとなくテレビで観た事のあるキャラクターのキーホルダー

キーホルダー、まさしくこの小説のキーになるものが隠されているわけですね!

なんとなくテレビで観た事のあるキャラクター・・・

ってことは、浦安でお馴染みの有名なキャラでないことは確かでしょう。

なんとなくテレビで・・・

ってことは、一昔前にテレビで流行ったキャラ・・・


もっふっふ・・・

わかったぞ!!!

今回のキーとなるのは、

みつまJAPANだな!!!

2007年に芸名の最後にダッシュをつけて『みつまJAPAN’』に改名してるんだぞ!

ほら!今回の主人公もダッシュで逃げた!!!!

どうだ!!!

くだらないだろう!!!

No title

いいですねぇ~!
ついに彼女がしかけてきたようですが、まだどう転ぶか分からない展開だし、まだ偶然の可能性も残されていますしね~。
自ら決めた『予定』に縛られる彼。
冷静な判断力を『性的興奮』によりまたひとつ道を踏み外した彼を待つのは、天国か地獄か?
天国だとしてそれは誰にとっての天国なのか?
地獄だとしてそれはどういった類の地獄なのか?
期待は膨らむばかりです!

マッピーさん


前にマッピーさんが、
エロい展開がどうのとか言ってたから、
持ち前のサービス精神で、
本編がブレない程度に、エロ要素を盛り込みました。

だけどね!
よくよく考えてみたら、
ストーカーの中には、エロい欲求って必ずあるでしょ?きっと。

逆にリアリティーが出たかなって。
マッピーのコメントが無かったら、この描写は無かったッスもん。

まぁ・・・
マッピーの事は嫌いなので、お礼とかは言わないけど(笑)

ponさん


なんと!!!
思い付きでズラズラ書いたのに、
そんなに、実際の斎藤さんの状況に酷似していたとは!!!

本編より、
こっちの方が、よっぽどホラーですね。

あ!
僕はストーカーじゃないですからね(笑)

ブタマンさん


またまた、いいとこ突いてくるなぁ・・・
そうですね。この女性・・・

おっと!何でもありません。




「一人暮らしの女性の家に侵入」
罪に問われないのであれば、毎日でも侵入してみたいものですな(笑)

クッタスさん


わざわざ太字まで使って、
いろいろと推理してくれてるみたいですが・・・




まぁ、そんな事、どうでもいいんですけどね!

ポリンキーさん


いやぁ~、
ミステリー好きのポリンキーさん、
略してミスンキーさんに褒められると嬉しいですね!


まぁ、
まるまる一週間ボケられなかった僕は、
完全に地獄でしたけどね(笑)

No title

>男の目を奪ったのは、
>その洗濯物の中にあった淡い色の下着類だった。


淡い色の下着類だった。

淡い色の下着

淡い色の・・・

淡い



あわ

あわあわ・・・

取鳥さん


マッピーリクエストに応えて、
ちょいエロ要素を放り込んだんですが・・・

やっぱり取鳥さんも反応しましたね(笑)
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