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金玉一少年の事件簿 第2話

俺は、美雪に促されて自分の個室を出ると、
同じ車両の一角に騒ぎを聞きつけてきた数人の乗客が集まっていた。

「すみません!ちょっと、通してくださいっ!」

その人たちを掻き分けて、俺はその部屋に辿り着き、
それを目撃した。

部屋の床に仰向けで倒れている女性。
目をカッと見開き、口から泡を吹き、ピクリとも動かない。





毒物死だ。

高校生ながら、いくつもの事件に遭遇してきた俺にはわかる。

「美雪が第一発見者なのか?」

「・・・うん」

「状況を教えてくれ!」

「彼女とは、夕食の時に食堂車で知り合ったのね。
 彼女がハンカチを落としたのを私が拾ったのがキッカケで・・・
 あの時は、はじめちゃんも一緒だったから分かるでしょ?」

「あぁ」

「それで・・・24時くらいかな?トイレに行こうとした時に通路でばったり会って、
 彼女が眠れないからって、この部屋でおしゃべりしたのよ」

「それは、何時くらいまで?」

「たしか・・・30分くらいよ。それで私は自分の部屋に戻ったの」

「それから?」

「私、一旦眠ったんだけど、さっきまたトイレに行きたくなって目が覚めちゃったの。
 それでトイレに行こうとしてこの部屋の前を通ったら、ドアが少しだけ開いてて、
 それで気になって、ちょっと覗いてみたら・・・」

「この状態だったって訳だな?」

「うん・・・」

「すると、犯行時刻は美雪がこの部屋を出た24時30分から、
 次に美雪が発見した2時30分までの約2時間って事になるなぁ」

「ねぇ、はじめちゃん!彼女どうしてこんな事に・・・」

「美雪!とにかく車掌を呼んできてくれないか?」

「わかった」





テテテテッ テテテテッ テ~テ~~~♪





俺は美雪が戻ってくるまでの間、部屋の外に目を向けていた。

怯えた顔で部屋の中の様子をうかがおうとする者、
走っていく美雪の後ろ姿を訝しげに眺める者、
何だ何だと必要以上に騒ぎ立てる者、様々だった。

「みなさん、落ち着いて!今、車掌さんが来ます。
 それまで皆さん、ここを動かないで!」




程なくして、美雪と共にやって来た車掌に、
俺はこれまでの状況を説明した。

「と、とりあえず私は、警察に連絡を入れてきます!」

「お願いします」




5分程して戻ってきた車掌は、
先程よりは幾分落ち着きを取り戻した様子だった。

「次の停車駅の函館駅で、北海道警の方々が待機してくれるそうです」





「車掌さん!ひとつ教えてください」

「はい」

「この列車が最後に停車した駅は?」

「盛岡駅ですが・・・」

「停車時刻は?」

「ちょっと待ってください」

そう言うと、車掌はポケットから手帳を取り出した。

「盛岡駅停車が・・・23時16分ですね」

「で、函館駅まではどこにも停まらないんですね?」

「はい。ちなみに函館駅には・・・5時2分着ですね」

「なるほど・・・」

「どうかしましたか?」




俺は、美雪の話と車掌の話を頭の中で整理し、
そこから導き出したひとつの事実を口にした。




「彼女は24時30分までは間違いなく生きていたんです」

「はい・・・」

「つまり盛岡駅を出て以降に彼女は殺された。
 そして、盛岡駅を出て以降、この列車は函館駅まで停まらない」

「・・・それが何か?」

「まだ分かりませんか?彼女を殺した犯人は・・・
 まだこの列車に乗っているって事ですよ!!!





テテテテッ テテテテッ テ~テ~~~♪





「いいですか?車掌さん。この列車にまだ犯人が乗っているのは間違いないでしょう。
 その犯人の心理を考えると、一刻も早く現場から離れたい筈です。
 つまり、函館駅に着いてしまえば犯人には逃亡するチャンスができる。
 言い換えれば・・・函館駅に着く前に犯人を捕まえてしまえばいいんですよ!!」

「しかし!警察が来るのは、その函館駅ですよ?
 それまでにって、一体誰が犯人を見つけるって言うんです?」

「・・・俺がやります」

「俺がって・・・失礼ですが、あなたまだ子供ですよね?」

「フッフッフ、俺の事を見くびらないで頂きたいものですね」

「あなた一体・・・何者なんですか?」

「俺は・・・金田一耕助の孫」

「あ、あの名探偵のお孫さん!?」

「人の話は最後まで聞いてください!」

「すみません・・・」

「金田一耕助の孫、金田一一・・・
 の同級生で英語の発音が周りをイラッとさせるガリ勉タイプの男・・・
 の頭に鏡を反射させて太陽の光を当てて遊んでた男・・・
 に淡い恋心を頂くケニアからの女子留学生・・・
 役を演じた新進気鋭の若手女優・・・
 にサインを求めたらストーカー規制法でパクられたヲタク・・・
 みたいにはなりなくないと切に願うセパタクロー選手・・・
 とあの日すれ違ったのは俺です!
 どうも!金玉一一です!!!」

「・・・・・・・・・つまり、一般人ね?」






テテテテッ テテテテッ テ~テ~~~♪






「どっちにしたって警察が来るまで何もできないんです。
 だったらこの事件、俺が解決してみせます・・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「いや!『じっちゃんの名にかけて』とか言わないんスか!!!」

テテテテッ テテテテッ テ~テ~~~♪







「言わないよ。俺、金田一じゃねーし!」

テテテテッ テテテテッ テ~テ~~~♪











「はじめちゅわ~ん!私の出番は~???」

テテテテッ テテテテッ テ~テ~~~♪











テテテテッ!

テテテテッ!


























tetetete.jpg
テ~テ~~~♪









次回『金玉一少年の事件簿~謎解き編~』

ご期待ください。
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