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コラボ小説スピンオフ『研修医 日輪井緑三郎』

1993年。

島根県立しじみ総合病院、カンファレンスルーム。





「じゃあ、そのクランケは今日から一般病棟に移して、2・3日経過を観察しよう」

「はい!」

「よし!それじゃ今日も」

「待ってください!医局長!!!」

「どうした?日輪井」

「昨日運ばれて来た柚子島さんはどうするんです?何もしないんですか?」

「あぁ・・・彼女の事か・・・
 お前もオペに立ち会ったんだから分かるだろ?もう手の施しようがない。
 もう意識が戻る事はないだろうし、俺達の役目はもう終わったんだよ」

「そんな・・・何か方法はあるはずです!!!」

「研修医の分際で、生意気な事を言うな!」

「命を助けようという気持ちに・・・研修医もベテランもあるものか!!!」

「いいか、日輪井!
 俺達の仕事はな、助からない患者を心配して悲観してあげる事じゃない!
 助かる患者に全力を注ぐ事なんだよ!」

「・・・・・・」

「ここでグダグダ話してたって患者が助かる訳じゃあるまい!
 以上!!!みんな仕事にあたってくれ!!!」

「はいっ!!!」






「俺は・・・俺は諦めないぞ・・・絶対に彼女を助けてみせる・・・」













ICUの一角。
そのベッドの上に柚子島はいた。

一通り他の担当患者の様子を見て回ってきた日輪井は、
彼女のベッドの脇にあった椅子に腰を下ろし、
彼女の顔と、彼女のカルテとを、交互に見やった。

柚子島満子、19歳。
マンション6階の踊り場から転落。
警察の話では、状況から見て自殺だろうとの事。
なんとか一命は取り留めたものの、
依然として意識は戻らず、危険な状態が続いていた。

彼女の体には今、何本ものチューブが通され、
モニタから規則的に放たれる電子音だけが、彼女の鼓動を代弁していた。

「こんな若い子が・・・死んでいいはずがない・・・
 僕が、僕がきっと、助けてあげるからね」

そこへ、ちょうど彼女の両親が戻って来た。




「お父さん、お母さん。少し休まれた方がいいですよ。
 昨日から寝てらっしゃいませんよね?」

「それは先生だって同じでしょう?」

そう言う彼女の父親の顔は少し笑って見えたが、
やはり瞳の奥からは、物言えぬ悲しみが伝わって来た。

母親は憔悴しきった様子で、日輪井に尋ねた。

「昨日の先生が言うように、やっぱり・・・
 満子は・・・満子は助からないんでしょうか?」

大粒の涙を拭おうともせず、
母親は日輪井の両腕にしがみついた。

「お母さん、大丈夫!必ず助かりますから!」





「おいっ!日輪井!!!」

隣りの患者を診ていた先輩医師、堀木が、
血相を変えて近寄ってきた。

「な、なんすか?ポリンキさん」

それは、
いつもは物優しい表情と口調で、
同僚から「ポリンキ」との愛称で慕われていた堀木の、
初めて見る険しい表情だった。

「いいか?日輪井!俺達医者は神じゃないんだ!
 軽々しく『必ず助かる』なんて言うんじゃない!」

「でも・・・」

まだ反論し足りないと言った様子の日輪井を制止し、
両親の方へ向き直って、堀木は口を開いた。

「昨日もウチの医局長が申し上げたと思いますが・・・
 娘さんは、非常に危険な状態です。それなりの覚悟をなさって下さい」

僅かな希望を打ち砕かれた母親は、
その言葉を聞くや否や、その場に崩れ落ち、
咄嗟に父親が抱きかかえた。

広いICUに、両親の嗚咽が響き渡った。







「柚子島さん!柚子島さん!!!」






余りにも大きなその声に、
堀木も、彼女の両親もはっとした。

声の主は、日輪井だった。
日輪井は彼女に覆いかぶさんばかりの勢いで叫んだ。

「柚子島さん!!!聞こえてるだろ!!!
 俺が何とかしてみせる!!!だから・・・
 生きるんだ!!!生きるんだ!!!生きるんだ!!!」

「よせっ!日輪井!!!
 今、俺達にできる事は何もないんだ!!!
 余計な事はやめろ!!!」

堀木が、ベッドから日輪井を引き離そうとしたその時、
今度は、その堀木を制止する者が現れた。

「ポリンキ先生!」

振り返ると、
そこに居たのは、看護師の馬場伴子だった。

「先生は、これが本当に『余計な事』だとお思いですか?」

「どういう事だ?」

日輪井は、尚も無反応の彼女に必死に語りかけていた。
それを横目に、馬場は続けた。

「私は・・・ここに着任された時から日輪井先生をずっと見てきました。
 確かに日輪井先生は、エロいし、酒癖悪いし、人間としては底辺だと思います・・・
 でも!誰よりも患者の事を想い、誰よりも患者の為に力を注いできた医者です。

 日輪井先生は・・・
 病気や怪我を診る医者ではなく、人を診る医者を目指してるんだと思います!!!

 そうですよね?日輪井先生!!!」

















「いや!下心!!!」







「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←馬場
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←堀木
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←父親
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←母親

















しかし、次の瞬間、
思いもよらぬ事が起こった。

「日輪井先生!彼女の右手!!!」

真っ先に異変に気付いた馬場の声に、
皆が一斉に彼女を見た。





すると、
柚子島満子の右手がピクッピクッと動いていた。

「柚子島さん!柚子島さん!!!」

日輪井は、より一層大きな声で彼女に問いかけた。

すると、
彼女のまぶたがゆっくりと開き始めた。

「ま、満子ぉ!!!」

両親は彼女の名前を叫びながら、
彼女の元へと駆け寄った。

「そ、そんな・・・信じられん・・・
 (動機はともかく)日輪井の熱意が彼女を呼び戻したとでも言うのか・・・」

堀木はつぶやいた。

「きっと、そうですよ!(動機はともかく)これが日輪井先生の力なんですよ!」

馬場は答えた。





柚子島は眩しそうな表情を見せたのち、
何かを告げようとするように口を開いた。

「何だい?柚子島さん!柚子島さん!!!」

日輪井が彼女に顔を近づけた。















「てめぇ!!!さっき、
 どさくさに紛れて、
 私のオッパイ触ったろ!!!」

バシコ~~~ン!!!






「ひゃ~~~ん!!!
 ごめんなさぁ~~~い!!!」









「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←馬場
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←堀木
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←父親
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←母親
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」←さしこ















~完~



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